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- / - [シネマと恋]
シネマと愛、そして恋。
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    評価:
    ---
    20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
    ¥ 1,900
    (2013-04-24)

    先般レンタルで鑑賞した『ルビー・スパークス』があまりにもよかったのでつい円盤を買ってしまいました。映画のDVDを買い出すとキリがないので余程のことがなければ手をださないと決めているのですが、これにはちょっとあらがえませんでした。この映画はすばらしすぎる。

    これは現在スランプ中で精神分析医にも通っている小説家がその精神科医に治療の一環として、つまり仕事ではなく、彼の飼っている犬を無条件に好いてくれるひとのことを想像して書いてみたらどうかと提案され書いてみたところ想像以上に筆は進み……ある朝、その女の子が実際の人間となって、しかも自分の恋人として、あたかも以前からつきあってきたかのように、姿をあらわした! という物語です。彼女が彼の小説内の人物であることは彼が小説に設定を変更したり、セリフを書き加えるとそのようになることで証明されます。彼は理想の恋人を手にいれ、しかもその理想の恋人を意のままに操ることもできる。これはちょっとした万能感です。しかし、この恋人たちは破綻してゆきます。意思のある彼女が好きなのに自分の思い通りにならない彼女は許せない、クラスの仲間と飲みに行ったり自分のアパートに戻ってしまったり自分のして欲しくないことをする彼女を彼は許容できない、でも、そこでテキストに修正をいれたら彼女はどんどん溌剌とした快活さや軽妙さや自らの彼に対する気持ちを語ることばを失って、まるで壊れたレコードや書き割りのようになり、彼の「理想の恋人」像から遠ざかっていってしまう……そんな葛藤から最終的に彼はテキストを終わらせることを選択します。

    ※最後のところ、ネタバレになるので反転させてみました。

    直前にエゴと恋情の競りあいともいえる狂騒的なシーン(たいへんな見所!)がくるだけにおだやかなラストはとても情緒的です。決して希望のない終わり方ではないし、むしろ恋愛にたいして(もしかしたら絶望しているひとでさえ)希望をもてるラストが用意されています。すばらしい映画だったといわざるをえませんでした。

    この『ルビー・スパークス』と前後していくつか恋愛映画を見ていて、そのなかでは『恋のロンドン狂騒曲』(ウディ・アレン監督)と『恋愛戯曲 私と恋に落ちてください』(鴻上尚史監督)もなかなかによい恋愛映画だったのではないかと思います。

    3作品に共通して言えるのは、これらは恋の映画であって愛の映画ではないということです。よくいわれる恋愛関係が結婚したり、子どもができたり、長いつきあいになると家族愛的な落ち着いた関係になる、恋情が愛情になる、というフローチャートはこれらの映画には微塵もありません。あくまで彼らは恋をしている。恋愛適齢期のひと(『恋愛戯曲 私と恋に落ちてください』)はもちろん、人生のおわりに近い人々(『恋のロンドン狂騒曲』)も恋をしている。恋を定義することはむずかしいですが、家族愛的な落ち着きのある愛を対語とするのならいつまでも狂騒的である恋こそが実は愛の向こう側にあるものなのかもしれません。もし愛が最終目的地であるのならそこに到達したとき、そのひとの恋人はもう書き割りのような味気なさしか持ちあわせていないのかもしれないのだから。

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